俺と奴の関係 ー fmkn
健人side
俺はアイドルだ。
結構有名でドラマにもバラエティー番組にも出ているような、ちゃんとしたアイドル。
アイドルには熱愛報道が付き物だ。
俺も何度か出ているが、今まで出たものは全てガセである。
恋愛していない訳ではないが、本当のことがバレると、他の芸能人がバレるよりすごく大変なことになってしまう。
それは、何故かと言うと。
「……おい」
「ん?あ、おかえり」
「おかえりじゃないだろ」
この男と交際しているから。
この男は菊池風磨。同じアイドルグループのメンバーで、俺の一個下。
中島健人の交際相手が、
男であること。
同じグループであること。
菊池風磨であること。
こんなことバレてしまったら、メディアに引っ張りだこになり、当分眠れない日々が続くだろう。俺の人生が終わってしまうかもしれない。
でも別れることはできない。
だって、好きだから。
俺はきっと、この男から離れることはできないだろう。
「なに勝手に入ってるんだよ。
鍵空いてたから泥棒かと思ったんだぞ」
「折角恋人が会いに来たのに、嬉しいありがとう大好きの言葉もないの?」
ふざけんな、と軽く頭をはたく。
美味しそうな匂いがしてふとテーブルを見ると、俺の好きなオムライスがあった。
「これ風磨が作ったの?」
「おう。冷めるから早く食えよ。」
こういうさり気ない優しさが憎い。
結局許す流れになってしまうから。
「…いただきます」
「どーぞ」
美味しい。
俺は普段、どちらかと言うと風磨に抱かれる身なのに、料理とか美容とかは風磨より劣っている。
だからといって風磨よりできるようになろうとは思わないけど。
「どう?」
「美味いよ」
「よかった」
ぺろりと平らげた俺が食器を洗っていたら、奴が背中から抱きついてきた。
「中島、あのさ」
「なに」
「今えっちしたいって言ったら何て言う」
「回りくどい」
「えっちしたい」
「待って。シンキングタイム。」
明日は仕事だ。
随分していないし、体にかかる負担も大きいだろう。
考え込んでいると、シンキングタイムが面白かったのか、笑った風磨の吐息が耳にかかった。
ふる、と体が震える。
「で?していいの、ダメなの」
「……いれないなら」
「りょーかい」
了承してくれたけどいれないならなんて、風磨はがっかりしたんだろう。
俺のことを大切にしてくれているような気がして、嬉しくなった。
「じゃ、どこまでならいい」
「……まさぐり合い」
「ぶっ」
笑い出す風磨につられて俺も笑った。
突然頭を少し引き寄せられて、軽いキスを受けた。
「ベッド行く?ここでもいいけど」
「馬鹿かお前」
風磨とほぼ同じ体型なのに、お姫様抱っこでベッドに連れられた。
優しく寝かされて、上から風磨が覆いかぶさってきた。
顔が、異様に男前で。
俺の恋人は最高にかっこいい。
この関係がずっと続きますように。
そう思いながら、降ってくるキスの雨を目を閉じて受け入れた。
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